94歳のSさんは、夕食の途中で5分がゆをおかずの小皿に盛っています。
かゆを盛るのだから、皿の縁からはかゆがこぼれ落ちるのだが、それにも構わずSさんは、おかずの魚の天ぷらを手でつまんで、その上に乗せる。
天ぷらの重みで、かゆはもっとこぼれています。
その"かゆ天丼"を、Sさんは床頭台の引き出しに入れようとしています。
ちょうど、仏壇のお供えのようにも見えるその"かゆ天丼"を指さして、私がSさんに尋ねる。
「仏さんにあげるん?」
「いいや、夜になって"生き仏さん"が食べるんじゃ」
なるほど、94歳にもなれば、"生き仏さん"ではある。
ところが、この"生き仏さん"、物忘れが年相応にあって、何日か経ってカチカチになった"かゆ天丼"が引き出しの中で発見されることとなるのだ。