老人ホームは病院ではないので、老人のいる部屋は「病室」とは呼ばない。
「居室」です。
中には、1丁目、2丁目なんて呼んでいる老人ホームもある。
もし「病室」と呼んでもいい部屋があるとすれば、「静養室」でしょうか。
ふつう、静養室は、医務室や寮母室のすぐ隣に設けられていることが多い。
特別養護老人ホーム園の静養室も、医務室から直接出入りできる定員2人の小部屋です。
このところ入園者はみんな落ちついていて、静養室は誰も使っていない。
その代り、マットだのシーツだのが空のベッドの上に積まれ、物置き代りのようになっています。
医務室から静養室に入ってすぐ左手にある小さな洗面台は、看護婦さんたちの手洗いや化粧直しのためにもっぱら使われています。
ある日、看護婦さんが「おかしいわねえ」と不審がっています。
その洗面台の棚に置いておいたハンドクリームの中身がきれいになくなっている、というのだ。
「まだいっぱい残ってたのよ」と言うのだが、はて?